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静かな「こころ」

 八木重吉は、1898年、今の町田市にあたる場所に生まれ、29歳にして結核で亡くなった詩人です。
短い詩、ひらがなの多い詩を多く残しており、キリスト者であったこと、家族がいる中で病床に臥せったことが作風に影響を与えている、などといわれています。


 やすらかな
 死がまっている
 いらいらとするな
 いらいらとしても
 こころのそこはやすらかにあれ
 


 しばらく
 ちんもくのせかいへゆけ
 ちんもくはぬぐうてくれる



 くものある日
 くもは かなしい

 くものない日
 そらは さびしい



 三篇引用しましたが、どれも五行以下なのにも関わらず、重吉ならではの世界観があります。
おそらく彼は薄味に至上の旨味を感じ、一瞬と永遠を区別せず、透明に極彩色を見たのだろう、と思います。
私は、仏教の考え方で言う「悟り」に近いものを彼の詩から感じます。
しかしその反面、宗教色が飛び切り強いわけでもなく、人懐っこさがあります。
彼の詩はまっすぐに、私たちのこころの真ん中に飛び込んでくる。
ことば、というものの美しさを教えてくれます。

 八木重吉の詩がもつ、せつなさ、はかなさは、私たちを癒すとともに私たちのこころに揺さぶりをかけてくるようでもあります。
病床に臥せり、子供と遊んだり一緒に過ごしたり出来ないこと、自らの死と向き合わなければならないこと、そうした歯がゆさ、どうしようもない、やるせなさがありながらも、「静か」なことば達。
彼の繊細なこころを感じることが出来る、マスターピースです。






『八木重吉詩集』
佐古純一郎 編
彌生書房 1968年
函付
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